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ワンドの2

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始めて二足歩行をした人類は、きっと全力疾走しただろう……と言った人がいる。

後脚だけでバランスを取ることは難しい。
立ち上がってはみたものの、倒れそうになり、あわてて片方の足を前に出す。
するとまた前によろめくので、もう片方の足を前に出す。
倒れまいとして交互に脚を前に運び、
結果として猛スピードで走ったのではないか、と言うのだ。

それが真実か否かは誰にもわからない。

わかるのは、現代においても、バランスを取ることこそが最も難しい、ということだ。


ワンドの2の札には、意志と野心の世界において、
過去と未来のちょうど真ん中でバランスを取る人物が描かれている。

未来の方向である右手に持っているのは、地球儀だ。
将来の計画と展望を表すモチーフだが、見た目の通り、
全世界のすべてを手中におさめようとする野望と考えてもいい。

過去の方向である左手に持っているのは、四大元素の火を象徴するワンド(棒)だ。
この棒は、彼が立っている堅牢な砦につながっている。
これまで築き上げてきた実績、テリトリー、スキルのすべてを踏み据えて、

彼は未来と過去の真ん中に佇立している。
将来のヴィジョンと過去の来歴は、きれいにバランスを保っている。

過去の経験を礎とした未来の計画は、実現の可能性大だ。
逆を言えば、経験もなしに目標を掲げてもうまくはいかないし、
せっかくの実績を役立てない今後の進路は、不安定なものになるということである。



働いたことがない、という女性がいた。
二十代後半で、親元を離れて一人暮らしをしていて、働いたことがないのである。
生活費も小遣いも、余るほどに親が送ってきていた。

彼女には友達がひとりもいなかった。
潤沢なお金を使って、独りあちこちに旅行に出かけた。
旅先で若い男の子に声をかけ、誘うことがよくあった。
派手で素行の悪そうな男の子が好きだった。
悪そうであればあるほど、ひどく惹かれてしまうのだった。

自宅に帰ると、彼女は毎晩のようにマンションの壁を殴っていた。
摂食障害があり、体重は三十キロ台だということだった。



彼女のことを占うと、いつもワンドの2が逆位置で出ていた。
カードの意味を伝えると、彼女はしばらく考えこんでいた。

ぽつりと口を開く。

未来って……。わかりません。たぶん、親が連れてくる誰かと、結婚させられるんだと思う。
過去は……なんだったかな。自分の過去じゃないみたいで、ぼんやりしている。



過去も未来も、あまりにも虚ろな女性だった。
どちらも空っぽで、自分の力で立ち上がることができない。

過去でも未来でもいい、どちらかに突出した力があれば、と感じた。

とてつもなく満たされた思い出や過大な自負心、自惚れや思い上がりでもいい。
ありえないほど大きな夢や無茶な憧れ、一世一代の賭けに出るパワーでもいい。

片足が前に出れば、倒れまいとしてもう片足も先に出る、交互に踏み出す、前のめりに。
倒れないために、全力疾走する。


彼女とは幾度か、タロットのセッションを行った。
少しずつ心は落ち着き、自罰的なふるまいも減り、
時間軸の中の自分、を考えるようになっていた。

何か、自分を表現したい。
でも、わたし、表現するような自分がないの。

変ですよね、と言いながらも、笑っていた。

小さい頃は歌手になりたかったんですよね……
ボイストレーニングとか、行ってみようかな……


そう話したのが最後で、それからの彼女の消息はわからない。
今でも。ふと気になって、彼女のことを考えながらカードを引いてみることがある。

展開のどこかに、いつもワンドの2が出る。

正位置だ。

きっと、しっかりと自分の脚で、この世界に立っているのだろう。

全力疾走しているのかもしれない。
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